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2008年9月 5日 (金)

黒牛に関する昔話

黒牛に関する昔話 (埼玉県の民話)
暗闇の黒牛 (
福娘童話集より)

むかし、二人の絵かきさんが旅に出ました。

ある日、二人は宿屋で、江戸からきたという男の人といっしょになりました。
三人で話しているうちに、男の人が言いました。
ところで、おまえさんたちのお仕事はなんですか?」

すると、一人の絵かきさんが胸を張って言いました。
「わしは絵かきじゃ。めずらしい国を旅しながら、絵をかいている」
 すると、もう一人の絵かきさんも、
「わしも絵かきじゃ。二人で旅をしながら、美しい景色を絵にかいている」
 それを聞くと、男の人はくやしくなり、
「それは それは。実はわたしも絵かきでしてな。江戸じゃ、少しばかり有名ですぞ」
と、うそをつきました。
「そんなら、ひとつ三人で絵のかきっこをしましょう」
「それはいい思いつきだ」
 二人の絵かきは、男の人が、どんな絵をかくのか見てやろうと思いました。
(・・・さて、これは弱った)
 絵のまるでかけない男の人は、困ってしまいましたが、いまさら、うそだとはいえません。
 なにくわぬ顔で、
「それじゃ、そちらから、かいてもらいましょう」
と、言いました。
 そこでまず最初の絵かきさんは、おかあさんが小さい子供にご飯を食べさせている絵をかきました。
 なかなか上手です。
 でも、男の人は、わざとつまらなそうに言いました。
「おかあさんが、口を閉じているのはおかしい。子供にご飯を食べさせるときは、親もいっしょに口を開けるもんです。それじゃ、つぎの方」
 もう一人の絵かきさんは、木こりが木を切っている絵をかきました。
 これもなかなか上手です。
(さすがに絵かきだ。二人ともうまいもんだ)
 男の人は、心の中で感心しました。
 でも、やっぱりつまらなそうに、
「木を切っているのに、木のくずがないのはおかしい」
と、言いました。
 けちを付けられた二人の絵かきさんは、おもしろくありません。
「それじゃ、あなたの腕前を見せてもらいましょう」
「よろしい」
 男の人は、筆にたっぷり墨をつけると、紙をまっ黒にぬりつぶしてしまいました。
 二人の絵かきさんは、びっくりしてたずねました。
「・・・?」
「・・・いったい、これはなんの絵ですか?」
 すると、男の人は、すました顔で、
「これは、まっ暗闇から、黒牛が出てきたところです」

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